鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「ちょっと、どうしちゃったの? りんりん!」
「うあー? ナト?」
余りの暑さにダラけていたら、目の前にいつのまに現れたのかナトがいた。
フワフワと浮きながら、ベッドに寝そべっていたあたしを睨みつけている。
「どうしちゃったのって?」
「だぁ~かぁ~らぁ~」
一文字一文字を強調して言うと、彼女は一気に息を吸い込んだ。
「絖覇のこと!」
絖覇。
今、一番切なくて、聞きたくない名前。
「別に、アイツなんて知らない」
そういうと、あたしはクッションに顔を埋めた。
「ちょっとー、りんりん!」
なんて、耳もとで騒ぎ立てるナトを悪いけど無視し、あたしは考えていた。
天界で、月明かりの下、キスしたときは口に出さなくても気持ちが通じ合ったと思ったのに。
結局、そんなことを考えていたのはあたしだけだったんだね。
勘違いして本当、バカみたい。
どうせ、あのキスも絖覇の気まぐれだったんだ。
あたしは振り回されてただけだった。
いいように、利用されていていただけだったんだ・・・・・・。
そう思うと、また涙が溢れた。
どうしようもなく、胸が痛い。
あなたのことを考えると、胸が痛む。
結局、あたしは・・・・・・。
あんなこと言われても、諦めきれないんだ。
本物のバカだね。