鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「今日は何で来たの~?」
あたしの手を握り、嬉しそうな曾爾は祠の近くにある岩に腰掛けて言った。
曾於は伯と遊んでもらっている。
伯は曾於の不老不死の身体能力についていけず、なかなか大変そうだ。
「今日は、ムギに会いに来たの。
ムギ、どこにいるか知ってる?」
そういって、曾爾の顔を覗き込んだ。
お父さんが、あたしを過去へ行かせたがっていたのは、ムギを連れて来てほしいというお願いだったからだ。
女神の欠片についてなど、相談したいことが多いらしい。
けれど、曾爾は顔を左右に振った。
「ううん。 知らない」
「えっ?」
「なにか、用事があるとかで、どこか行っちゃったの」
曾爾は、小石を拾うと遠くへ投げた。
さすがは不老不死の番人。
その身体能力のせいで、小石は見えないところまで飛んで行った。
落ちた音すら聞こえない。
というか、今の曾爾、本気で投げてないからね!
手首の動きだけで、小石を遥か彼方へと吹き飛ばしてしまうその力に、また感心してしまった。