鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「お前だって、俺の『女神の力』を目の当たりにしたはずだ」
女神の力・・・・・・?
思い当たらない・・・・・・。
「俺が魔物を睨んだだけで、黙らせたことがあっただろう?」
あ・・・・・・!
言われてようやく、記憶が蘇った。
あたしが魔物に襲われそうになったとき、絖覇が眼鏡を外して魔物を睨んだんだ。
それだけで、魔物は攻撃することを怯んだ。
それは、絖覇が女神の移し身だったから・・・・・・。
絖覇の中の女神の力を感じとったからなんだ・・・・・・。
「それに、俺はりんや千さんに教わらずとも、鈴姫や女神について知っていた。
それは、俺の中に女神の記憶があったからだ」
今になって、ようやく不可解な点がいくつもあったことに気づかされた。
彼は、冷たい無表情を変えずに冷たく言葉を吐き捨てるように言う。
あまりの変化に、思考がついていかない。
この人は、本当に絖覇なの?
あたしの知っている絖覇なの・・・・・・?