鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「──どうして・・・・・・」



「?」



「どうして、そんなこと、あたしに言うの・・・・・・?」



「え?」



 あたしの質問に、彼は初めてわずかに眉を動かした。



「あなたからしたら、言わない方が得じゃないの?


 天界のものたちは、血眼になって女神の移し身である絖覇を捜してる。


 もし、あたしが絖覇のことをアンゼリカさんに言ったら、捕まる可能性は一気に跳ね上がる。


 そしたら・・・・・・殺されるかもしれないのに」



 最後の言葉は、小さく消え入りそうだった。


 顔を上げていることも辛くなって、あたしはうなだれた。



「ッ!」



 絖覇は面食らった顔になり、再び無表情に戻る。



「・・・・・・それは・・・・・・!」



 そこまで言って、彼は頭を左右に振った。


 まるで、何かを言いかけたように・・・・・・。


 そして・・・・・・。



「絖覇・・・・・・!」



 クルリとあたしたちに背を向けると、森の奥に消えた。



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