鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~

大好きだから








 あのあと、気付けばあたしは自分の部屋のベッドにいた。


 どうやって帰ってきたのか、記憶にない。


 それほど、ショックだったんだ。


 絖覇が、女神の移し身だということがじゃない。


 彼が、あたしのもとから去ってしまったということに。


 生まれたときから、ご近所さんで仲良くしてきた。


 ずっと、ずっと、一緒にいた絖覇。


 保育園入学のときも。


 小学校入学のときも。


 中学校入学のときも。


 高校受験のときだって一緒だった。


 いろいろな行事は、二人で楽しんだ。


 あんなに、一緒にいたのに・・・・・・。



 今、あなたは隣にはいない。



 どうして、こんなささいなことが幸せだったんだって気づけなかったんだろう。


 当たり前が、どれだけ大切なことだったのかなんて、どうして、今気づくんだろう。


 人は、大切なものを失ってようやく、それが大切だと気づくんだね。


 後悔しても、遅いのに・・・・・・。





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