鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「魔物と話していたところを、魔物が出現したことに気づいた天使が見つけたそうだ。


 今、天界に転送されたらしい」



 そんな、絖覇が・・・・・・。


 お父さんの話の最後の方は、耳に入ってこなかった。


 ただ、どうしようもない絶望に晒されている。


 どうしよう。


 絖覇が捕まってしまった。


 もしかすると、酷い仕打ちを受けるかもしれない。  


 もしくは、死刑が・・・・・・待っていたら。


 大切な人を失ってまで、あたしは・・・・・・。


 これから、魔物退治なんてしていけない。


 ガバッと起き上がり、お父さんの肩を掴んだ。


 彼は、少しギョッとした表情になる。



「お父さん! 絖覇は!?


 これから、どうなるの?」



 ゆさゆさと激しく揺さぶると、お父さんは「やめろ」と唸った。


 けど、今はそれどころじゃない。



「処罰は、アンゼリカが天界の幹部たちと共に決める」



 ようやくお父さんは、まだ揺れる視界をなんとか正し、言った。


 アンゼリカさんたちが決める・・・・・・?



「それってやっぱり天界で!?」



「あ、ああ。


 俺も一応出席しなければいけない」



「じゃあ、あたしも連れてって!」



 お父さんが最後の言葉を言い終わる前に、あたしは食い気味で叫んだ。


 絖覇は、何も悪いことしてない。


 いくら、女神の移し身だからといって、絖覇自身が何かしたわけでもないじゃない!


 だったら、あたしがなんとしてでも止めてみせる!



「でも・・・・・・」



 困惑したように、眉をひそめるお父さんにあたしは頭を下げた。



「お願いっ、お父さん・・・・・・ッ!」 





< 272 / 445 >

この作品をシェア

pagetop