鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「りん・・・・・・」



「お願い・・・・・・このままじゃ、絖覇は・・・・・・」



「・・・・・・わかってる。


 無実だと言いたいんだろ?」



 突然のお父さんの言葉に、思わず顔を上げた。


 え・・・・・・?



「そんなの、わかってる。


 絖覇が、なにもしていないことくらい。  


 それでも、他のやつらがどうするかわからないし、何しろすずかのことが、関わっているんだ・・・・・・!」



 お父さんは、悔しそうに拳をベッドにたたき付けた。


 ああ。


 本当は、お父さんだって信じたくないんだね。


 絖覇が女神の移し身だということを。


 それでも、もしかすると、絖覇はお母さんを眠らせているのかもしれない。


 お父さんにとっての優先順位は・・・・・・お母さんだから。


 だから、どうしようもないんだ。


 お父さんの悲痛な思いを感じとると、胸が張り裂けそうなくらい、苦しくなった。


 だったら・・・・・・。



「絖覇は、あたしが救う」



「は・・・・・・?」



「だから! 絖覇はあたしが救うの!」



 お父さんがムリなら、あたしがやってやる。



「でも、りん、それは・・・・・・」



 危ないって言いたいんでしょ?


 でも・・・・・・。



「大丈夫だよ、だってあたし、絖覇のこと好きだもん!」



 ポカンとしているお父さんに向かって、あたしは笑顔を向けた。


 不思議と、怖くはなかった。


 ただ、あなたに会いたい。


 その気持ちの一心で。


 あたしは、そのためなら、なんだってしてみせる!



「・・・・・・お前はやっぱりすずかに似て、強いんだな」



 キレイな笑みを浮かべながら、お父さんは立ち上がった。



「わかった、一緒に行こう。


 ただし、無茶はするな」



「うん!」



 強く頷くと、お父さんはあたしの頭に手をポンポンと置いた。



 そして、あたしたちは再び、天界へ行くことになった。




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