鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
この前と同じく、お父さんに案内してもらい、天界へとたどり着く。
今は、日がすっかり沈んでしまい、辺りを闇が包んでいた。
その闇のなかに、銀色の月をバックに照らし出される天界の島たち。
この前のときとは、事態がちがう。
妙な緊張感が、胸の鼓動を高まらせた。
「じゃあ、いいか?」
「──うん」
小さく頷くと、お父さんは門を守る、屈強な門番の天使に近づいた。
「黒木 千だ。
例の件で、天界に伺った」
「──お待ちしておりました。 ようこそ天界へ。
──そちらの方は・・・・・・?」
門番が、ちらりとこちらを睨んだ。
その冷ややかな目に、背筋がゾクリと震える。
「私の娘だ。 悪いか?」
「──いえ、おは入りください」
一瞬、疑ったような目を向けられたあたしは完璧に固まっていた。
けれど、お父さんの権力?もあってか、中へ入れてもらえた。
よ、よかった・・・・・・。
「こっちだ。
処罰をするとすれば、それは〈白銀の城〉の城の近くにある、裁判所だ」
天界に裁判所なんてあるんだね・・・・・・。
すごいな。
お父さんの後を追い、たどり着いたのは城と同じく白い壁に青い屋根の裁判所だった。
中から、こうこうと光るまばゆい光が外まで洩れだし、そこには、天使の人だかりが出来ている。
何が起こってるの?
何やら、人の声がひっちゃかめっちゃかに聞こえてきた。