鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「すまない、通してくれないか」



 お父さんが顔パスで、その人だかりを通してもらうと、ようやくあたしたちは中に入ることが出来た。


 そして、そこの光景に目を疑った。


 部屋の奥には高いところに設置された裁判長の椅子があり、そこに威厳のある天使が座っている。


 そして、その横の辺りに天界の幹部たちが険しい顔で並んで座っていた。


 お父さんはどんどん進み、先に来ていたらしいロイルさんの隣に座った。


 あたしはどうしたらいいかわからず、少し遠目のところで立ち止まったまま。





 中央に、手錠によって両手を繋がれた、眼鏡をしていない絖覇がいたからだ。





 久しぶりに会えた彼は、少し痩せたように見える。


 漆黒のサラサラな髪も、少し伸びたようだった。


 彼は何も言わずに、ずっと、裁判長を見つめている。



 そして、絖覇の処罰を決める裁判が始まった。



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