鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




「椿 絖覇はかつて、天界の統率者を殺害、そして世界を滅ぼそうとした女神の移し身である。


 その身に宿る女神の力は、後に復活する可能性もある。


 よって、この者をどう処罰するか」



 裁判長は無表情のまま、絖覇の刑を言う。


 そんなの、女神がしたことで、絖覇はなにもしてないじゃない!


 そう、叫びたい。


 でも、こんなところで叫んだら、もっと事態を悪くしてしまうかも・・・・・・。



「我らが女王──アンゼリカ様は、どうお思いか」



「わたくしは──」


 アンゼリカさんが、その朱い唇を開いたとき、何を言われるのかわからなくて、怖くてら気付けば身体が動いてしまっていた。



「やめてください!」



「なに!?」



 そう、絖覇の前に走り出てしまったのである。


 途端に、辺りはざわつきはじめた。



「あれっ、りん!?」



 幹部の方たちは、あたしを見て驚いている。


 あー、やっちゃった。


 あたしの、バカッ!


 お父さんに無茶はするなって言われてたのに・・・・・・。


 でも・・・・・・。


 ここで、言わなかったら・・・・・・絖覇は・・・・・・。



──ガンガン!


 
 裁判長が木づちを叩き、再び裁判所は静寂に包まれる。



「そなたは何者だ」



「・・・・・・突然の無礼をお許しください。


 
 あたしは、鈴姫と千の娘、りんと申します」



「鈴姫の・・・・・・」



 また、微かに裁判所がざわつきはじめた。



「この者は、なにも悪くはございません。


 だから、罪に問うのはおかしいと思います」



 あたしは、あたしの思うことをぶつけてやる!



「・・・・・・そうか、しかし、そなたは知っているんじゃないのか?


 女神が、どれほどの残酷非道なやつなのか、両親から聞いたのではないか?


 なにゆえに被告を庇うのだ」



 裁判長の言葉にカチーンときてしまった。


 ああ、もうムリ。


 堪えられない。


 あたしは、下げていた頭をバッと上げ、裁判長を睨みつけた。


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