鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「っだから!
いつ絖覇がそんなことをやったのよ!
悪いことしてたのは、女神でしょ!?
絖覇はなにもしてない!
なにも悪くない!
それなのに、なんで絖覇が罰せられなきゃいけないのよ!」
敬語とか、常識とか、全て吹き飛んでしまっていた。
とにかく、この理不尽な裁判に頭にきちゃってる。
そりゃ、裁判なんて全然わかんないけどさ!
裁判所にいた天使たちは、まさかあたしが怒鳴るとは思わなかったのか、みんな引き気味だ。
でも、そんなの気にしない。
「なぜ、だと?
それは、コイツが女神の移し身だからで・・・・・・」
「うるさい!
絖覇は絖覇なの!
勝手に別の人にさせないでよ!
それに、女神なんて追い出せばいいでしょ!?」
「そんなの、どうやって・・・・・・!」
呆気に取られた裁判長は、眉をひそめて、叫んだ。
うっさい。
言葉にするのもめんどくさい。
こうすりゃいいの!
あたしはクルリと、反対方向を向いた。
目の前には、ぼんやりとした目で遠くを見つめている絖覇がいる。
あたしは、前に身を乗り出すと、背伸びをした・・・・・・。
「ッッ・・・・・・!」
そう。
自分から、絖覇のその唇に、自分のそれを重ねた。