鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「し、かし・・・・・・」
俺の前に座っている年老いた男は、顔をしかめている。
コイツは、裁判長か?
意識がなかったからか、なかなか事態を把握出来ていなかったけれど、ようやくわかってきた。
「被告が女神の移し身であるのは事実で・・・・・・」
なんとしてでも、俺を悪者にしたいのだろう。
口の中で何かをぶつぶつと呟く裁判長を見て、内心少し呆れてしまった。
「──あの・・・・・・いいかしら?」
澄んだ女性の声が響いて、その場の全員の視線がそちらに向いた。
その声の主は、厳しい顔をしたアンゼリカさんだった。
裁判長を、強く見つめている。
アンゼリカさんは、ここの女王だ。
一番発言力がある。
彼女の一言で、判決が変わってしまうかもしれない。
もしかすると、彼女は俺を処罰したいのかもしれない。
ゴクリと、生唾を飲み込むと、彼女はこちらを向いた。
もちろん、厳しい目で。