鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





 昔々。


 それはもう、想像もできないくらいの長い年月を遡ったときのこと。


 つまり──太古の昔。


 この地球が生まれて、人類が運命に生み出されたとき、ムギはこの世に希望を生み出すため、均衡を保つために生み出された。


 ムギはただ一人で──この世界を守りつづけていた。


 彼女は当初、人の形をしていたものの、何の感情も抱いていなかった。


 誰とも、接することがなかったから。


 でも、どんどん人類が進化していき、いろいろな知識や知能を持つようになった。


 だから、ムギにもだんだんと接してくれるようになったんだ。


 それでも彼女は──うまく応えられなかった。


 “感情を持っていないから”


 ムギは精一杯、人類と仲良くしようとした。


 けれども、なかなか思うようにいかなくて・・・・・・。


 気付けば、周りには誰もいなかった。



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