鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「ごちそうさまでしたっ!」
「気をつけていってらっしゃい」
「はーい」
ニコリとお母さんは笑って、手を振ってくれた。
お母さんは美人なので、娘のあたしでも思わず見とれてしまった。
いけない、いけない遅れちゃう!
「行ってきます!」
そして慌てて家を飛び出した。
まだ高校生になったばかりだから、通学時間が長くなったため早く起きなきゃいけないのだけれど、どうしても時間感覚がおかしい。
もう一ヶ月経ったのに。
通学路だけはばっちりと覚えているため、その道を走り抜ける。
実は、あたしの通う高校は、お母さんとお父さんが卒業した学校。
制服に憧れて入った、なんて言ったら怒られちゃうかな。
「おーい、りん!」
遠くで、高めの男の子の声がした。