鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~



「ナトちゃんがりんちゃんに抱き着いた━━ッ!」



「二人は知り合いなの?」



 一斉にみんなが喋りだすため、質問の嵐。


 そんな中なのに、ナトはぎゅうぎゅう抱き着いて、離してくれない。


 く、苦しっ!



「な、ナト。


 離して・・・・・・」



「りんりんと同じクラスになれてよかったよー!」



 わかった、わかったから!


 なんとか彼女を引きはがし、赤紫色の瞳を見つめる。


 
「ナト、なんで高校にきたの?」



「なんでって、そりゃりんりんを守るためだよっ」


 彼女は嬉しそうに言うと、胸を張った。


「守る?」


 どういうこと?



「うん!


 だってりんりんと私はまも・・・・・・モガッ」



「ナト、言っちゃダメ!」



 慌ててナトの口を塞ぐ。


 ここで魔物とか言われちゃ困る。



「黒木?どうしたんだ?」


 先生が不思議そうな顔で、あたしたちを見つめていた。


 クラスのみんなもそう。


 ヤバイ。



 今、ホームルーム中だった!




「なんでもないです。 すみません」



「・・・・・・?


 そうか、ならいいんだが。


 ジーンは、黒木の左隣りの席に座ってくれ」




「はい!」




 ナトはパアッと顔を輝かせると、隣の席に座った。


 たぶんナトはこう思ってる。



『りんりんと隣の席だーっ! やったぁ!りんりんといつも一緒だ!』と。



 ホームルームが終わるなり、あたしたちの席の周りには人だかりが出来たのは、言うまでもない。





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