鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
現れたのは
なんと言ったらいいのか、わからない。
あたしがここで軽はずみなことを言っても、さらに深くムギを傷つけてしまうのかもしれない。
ただ、今のあたしには弱々しい彼女に寄り添うことしかできなくて・・・・・・。
何もできない自分が、今まで以上にもどかしかった。
「──その、彰さんはどうなったんだ・・・・・・?」
お父さんが、そう言った。
確かに、そこが気になる。
世界は今、滅んではいない。
でも、そうしたらムギは・・・・・・彰さんを選ばなかったの?
ムギは、目を大きく見開いた。
そして、しばらく考え込む。
何かを思いついたのか、彼女はおもむろに口を開いた。
「私、は・・・・・・たぶん彰を選んだ・・・・・・」
彰さんを、選んだ・・・・・・?
「なら、どうして世界は滅びてはいないの・・・・・・?」
「それが・・・・・・何も、覚えてないのよ・・・・・・」
あたしの質問に、ムギは悲しそうな顔で答えた。