鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
なぜか戦闘体勢に入っているお父さんと、のんびりマイペースな神様。
あたし一人があわあわしている。
ちょっ、この修羅場、どうすればいいのよ!
助けを求め、ムギの方を向いた。
けど・・・・・・。
「え────?」
彼女は、なぜか電池の切れた人形のように突っ立っていた。
その大きく見開かれた小麦色の瞳には、驚きと戸惑いが浮かんでいる。
ムギ・・・・・・?
どうしたの?
「なぜ・・・・・・あなたがここに・・・・・・」
ようやく口を開いたムギは、それだけ言うとまた口を閉じてしまう。
瞳はわずかに細められた。
それを見た神様は、ほっほっ、と髭を撫でながら笑った。
「久しいな、伝説の鈴よ。
今は、ムギと名乗っているのか?
誰に名付けてもらったんじゃ?」
「──知っているでしょう?
あなたは世界中どこでも見ることができるのだから。
そんなことを聞くために来たわけではないのでしょう?」
テンポの早い話になかなかついていけない。
やっぱり、お互い顔見知りだったのね。
二人の様子に、お父さんは霊力を微かに感じ取れるくらいまでに弱めた。
そして、あたしの横へと並ぶ。
「お父さん、知ってるの?
その、神様のこと」
「ああ、うっすらとだけだがな。
この世界を造った創世神は、俺たち『番人』を造った者でもあるからな。
この世界の全てのものは、あの方が造ったと言っても過言ではない」
ひょえーっ!
おじいちゃんとか軽々しく言っちゃってゴメンなさい!
そんなにすごい人だったんだね・・・・・・。