鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 それでも、一言でいいから、『ひとときだけなら』と、言ってほしかった。


 それでも、よかったのに・・・・・・。



『──わかりました。 世界を選びます。


 けれど、一つだけいいですか?』



『なんだ?』



『彼の側にいさせてください。


 共に生きようなんて言わないから・・・・・・せめて側にいさせて・・・・・・』



 ムギの声は、震えてしまっていた。



 (本当に、すまない・・・・・・!)



 けれど、神様は冷ややかな声でいった。



『それも、許すことは出来ぬ』



『・・・・・・!? なぜ!』



『そなたは、一度世界を捨てた。


 世界を守るものが、世界を捨てると決めた瞬間、その世界を守るための力は全て失われてしまうんじゃ・・・・・・』



『っ・・・・・・!』


 
 ムギは、本当に絶望した。


 その時に、深く後悔した。

 
 取り返しのつかないことをしてしまったのだと。


 ただ、彼と共に生きたかっただけなのに・・・・・・。


 そして、それが叶わなくなった今、唯一のムギの役目は世界を──彰さんの生きる世界を守ることだったのに・・・・・・。


 そちらも、奪われてしまった。



『っあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!!』



 神様の住む神聖な部屋に、ムギの声にならない、いろいろな想いの入り混じった叫び声が響き渡った。





< 316 / 445 >

この作品をシェア

pagetop