鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
それでも、一言でいいから、『ひとときだけなら』と、言ってほしかった。
それでも、よかったのに・・・・・・。
『──わかりました。 世界を選びます。
けれど、一つだけいいですか?』
『なんだ?』
『彼の側にいさせてください。
共に生きようなんて言わないから・・・・・・せめて側にいさせて・・・・・・』
ムギの声は、震えてしまっていた。
(本当に、すまない・・・・・・!)
けれど、神様は冷ややかな声でいった。
『それも、許すことは出来ぬ』
『・・・・・・!? なぜ!』
『そなたは、一度世界を捨てた。
世界を守るものが、世界を捨てると決めた瞬間、その世界を守るための力は全て失われてしまうんじゃ・・・・・・』
『っ・・・・・・!』
ムギは、本当に絶望した。
その時に、深く後悔した。
取り返しのつかないことをしてしまったのだと。
ただ、彼と共に生きたかっただけなのに・・・・・・。
そして、それが叶わなくなった今、唯一のムギの役目は世界を──彰さんの生きる世界を守ることだったのに・・・・・・。
そちらも、奪われてしまった。
『っあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!!』
神様の住む神聖な部屋に、ムギの声にならない、いろいろな想いの入り混じった叫び声が響き渡った。