鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「それで、ムギに彰は力をあげたから、世界は滅びず、ムギの力も健在なんだな」



 お父さんが深刻な顔つきで頷いた。


 そんな・・・・・・。


 そんなの、哀しすぎるよ・・・・・・。


 どちらとも手にすることができず、せめて側にいたいと願ったのに、彼女の幸せを願った彰さんは自ら力を差し出した・・・・・・。


 そんなに悲しすぎる、力・・・・・・。



「それじゃ、彰さんは・・・・・・?」



 どうなったの?


 ムギも、それが知りたいらしく、小麦色の瞳を絶望を映しながらも強く輝いている。



「もちろん、もう死んださ。


 ムギは、不老不死だ。


 彰が力を差し出すとすれば、不老不死の力も含まれている。


 つまり、力を差し出したとき、彰はムギに全てを託したんじゃ」



 神様は、再び白い髭を撫でた。


 彰さんは・・・・・・もういない?


 でも、考えてみれば不老不死だって、それは番人の『力』だ。


 力を全て捧げるなら、不老不死の力──つまり命を差し出すことも含まれていたんだ・・・・・・。


 それでも、彰さんは、ムギに力を差し出した。


 きっと二人は・・・・・・ううん、絶対二人は深く愛し合っていた。


 互いの想いを押し殺し、自分の命を投げ出すことも厭わない。



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