鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 
「神様は、このことを伝えたかったのですね・・・・・・」



 泣いてはいけないと、わかっていたけど・・・・・・あたしの目には涙が浮かんでいた。


 この二人の悲しすぎる恋物語を聞いて、泣かずにはいられないでしょう?


 お父さんを見れば、お父さんもうっすら涙を浮かべている。


 ムギは、もう涙を流すことはせず、わずかに赤くなってはいるものの、その瞳にはいつもの強い光が宿っている。


 
「それだけではない」



 神様はそう言った。


 え?


 まだあるの?


 二人もポカンとしている。


 今、思い浮かぶといえば・・・・・・。


 何かあったか、部屋を見渡した。


 ・・・・・・ん?


 あれ? もしかして・・・・・・。



「──絖覇・・・・・・?


 もしかして、そこにいるの?」



「は? 絖覇が?」



 お父さんが、意識を集中させた。


 そして、目を見開くと、居間から出るドアへと向かっていく。


 そして・・・・・・。



──ガチャ。



「あっ・・・・・・!」



「よっす・・・・・・お邪魔してます」



「絖覇! いつからいたの!?」



 ドアに耳を付けるようにして、話を聞いていた絖覇だった。




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