鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「っ、ムギ・・・・・・!」



 アンゼリカさんが、美しい顔を悔しそうに歪ませる。


 キキは、突然のことに、身動きすら取れずにいた。



「っ、ムギのところに、あたしが行く・・・・・・!」



 そう叫ぶと、仲間の視線がこちらに集まった。



「りんが行くなら、俺も行く」



 絖覇がすぐさま、あたしの横へと並んだ。


 ポカンとしていたアンゼリカさんは、すぐに表情を引き締める。


 そして、力強く頷いた。



「わかりました。


 わたくしとキキは、何人かの天使を連れ、『扉』へ向かいます。


 少しでも魔物がこちらの世界に溢れて来るのを、せき止めます・・・・・・!」



「よし、わかった。


 俺と曾爾たちは、ここで魔物を浄化して、ムギのもとへと行くりんたちに、魔物を近づけさせないようにしよう」



 お父さんと、アンゼリカさんは次々とそれぞれの意見を述べた。


 それを注意深く聞いていた曾爾たちも、深く頷いた。


 曾於が、皆の身体の傷を少しずつ癒している。


 けれど、曾於も霊力の限界があるため、本当にわずかしか、回復ができないようだった。



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