鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





 どうしよう・・・・・・。


 結界を破らないと、ムギに近づくこともムリだ。


 どうしよう、どうしたら・・・・・・!


 結界の奥にいる、ムギを見上げた。


 ムギ・・・・・・!



「あの・・・・・・」



 背後で、キレイな澄んだ声が耳もとで聞こえた。


 聞いたことのない声に、なぜか、心が震えた。


 ゆっくりと、後ろを振り返ると・・・・・・。



「あなたは・・・・・・?」



 そこには、鮮やかな十二単を幾重にも重ねた、美しい女性がいた。


 地まで届くほどの黒い髪がサラリと風に揺れた。


 彼女は、ニコリと花が咲いたような笑顔を浮かべる。



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