鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




「あの、“勘違い”ってなんのことですか?」



 絖覇が隣で、低い声で言った。


 絖覇?


 どこか警戒した様子の絖覇に、疑問を抱く。


 神様は、表情を変えずに言った。




「確かにムギを止めることは出来た。


 しかし、魔物がこちらの世界に流出してくるのは止まってはいないぞ?


 ムギは力を失っているため、『扉』を制御することが出来ない。


 つまり、魔物を止めることが出来ないんじゃ」



「それ、神様はできませんか?」


 
 あたしの質問に、しばし考えた様子の神様は、頭を下げた。



「──すまないが、出来ない。


 わしは今、この世界をなんとか動かすだけで精一杯じゃ。


 大気汚染によって、空気は汚され、地球温暖化という問題まで出てきている。


 それを、これ以上進行させないために、ほとんどの力を使っていて、そちらに回すほどの力は残っていないんじゃよ」




 そんな・・・・・・。



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