鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





 このままじゃ、ムギは完全な魔物になってしまう!



「ムギ! 目を覚まして!」



 神様の攻撃によって、一旦動きが止まっていたムギは、再びその身体をフラリと起こした。


 そして・・・・・・。



──バシュウゥ!



「き、ゃあっ!」


 ググッと身体を屈め、脚に力を込めたかと思うと、一瞬で消えた。


 いや、違う。


 目にも止まらぬ速さで、目の前を横切ったんだ!


 ムギの身体は、黒い何かに覆われ始めていた。


 ムギが、魔物に取り込まれている!



「ムギ! やめろ! やめてくれ!」



 彰さんが、泣きながらムギに訴える。


 しかし、ムギは理性を失ったのか、聞く耳を持たない。



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