鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
げ、来た。
「なによ・・・・・・絖覇(こうは)」
絖覇は笑いながら走ってくると、自然にあたしの隣に並んだ。
あたしは走るのに疲れてしまって歩いていたからなおさらだ。
「そんな嫌そうな顔しなくてもいいだろ?」
そんなこと言っても。
椿 絖覇。
あたしの幼なじみ。
近くに住んでいて、だいたい朝通学中に会ってしまう。
同じ高校だからしょうがないけど。
黒くてつやつやした髪を持っていて、黒縁眼鏡をしている。
その眼鏡の奥は黒い瞳。
制服の中にはパーカーを着ていて、少し着崩している。
周りの女子はカッコイイとか言うけど、あたしからしたら・・・・・・。
「なあなあ、りん♪」
「ちょ、何するのよ!」
絖覇は、突然あたしの腰に腕を回した。
やめろっ!
──ボコッ。
「いたっ!
なにすんの、りん~」
「なにすんの、じゃないわよ!
バカ絖覇!」
殴ったら、絖覇は大袈裟に痛がるふりをして、あたしから離れた。
ふう、やっと離れた。
このチャラ男が!
あたしからしたら、ただの弟みたいだ。