鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





「うえぇぇえ~、絖覇のバカァ・・・・・・」



 悪態をつきながら、あたしは廊下をとぼとぼと歩く。


 ワガママだというのはわかっている。


 わかっているけど・・・・・・。


 あたしだけが知っている絖覇の顔を、知られたくないなんて・・・・・・。


 でも、あたしだけが、知っていたかった・・・・・・。



 絖覇・・・・・・。


 嫉妬で胸が、苦しくなる。


 ワガママな彼女なんて、絖覇もイヤだよね・・・・・・。


 ああ、でも、どうしよう・・・・・・。


 このモヤモヤした気持ちを、どこにぶつけたらいいのか、わからない。


 こんな、あたし、イヤだよ・・・・・・。



 気付けば、空き教室がいくつか並んでいる校舎の方へと来ていた。


 その時。



「──っ!」



 何者かに、


 身体ごと、


 教室の中に、


 引きずり込まれた。




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