鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





 今までで、一番充実した日を送ったあたしは、とても幸せだった。


 学校が終わり、校内には部活をする人が点々としているだけ。


 今は、太陽が雲に隠れていて、ようやく涼しくなっていた。


 あたしはというと・・・・・・下駄箱の前で、絖覇を待っている。


 これは、付き合う前からの習慣になっている。


 ・・・・・・あたしと絖覇、付き合うっていったって、あんまり今と変わらなくない?


 ムムム。


 恋愛初心者のあたしは、頭を抱えてしまう。



「おーい! りーん!」



 そのとき、廊下の遠くのほうで、絖覇の駆けてくる足音と、声が聞こえた。


 そんな悩みも、一瞬で吹き飛んでしまう。



「待ったか?」



「うん」



「わりぃな」



 素直に頷いたあたしに、絖覇はうなだれた。


 そんな彼を見たあたしは、意地悪げにクスリと笑った。



「ウソ、ウソ! さ、帰ろ!」



 絖覇の手をとり、外へと歩き出す。


 
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