鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~






「────」



「えっ」




 すずかの瞼が、ピクリと動いた気がした。


 涙で霞んだ目を擦り、再びすずかの白い顔を見つめる。


 胸はいつも通り、規則正しく上下している。


 頬は、わずかに紅色(べにいろ)に染まって来ている気がした。



「すずか?」



 声が、震えてしまった。


 ピクリ。


 握っていた、彼女の手が、わずかに痙攣する。


 その握っている手に、力が入らなくなる。


 彼女は、ゆっくりとその瞼を動かし、茶色の瞳をあらわにした。


 信じられない気持ちの俺は、身動きが取れない。



「──せ、ん」




 確かに彼女は、俺の名前を呼んだ。


 これは、現実か・・・・・・?


 夢じゃ、ないのか?
   

 
< 432 / 445 >

この作品をシェア

pagetop