鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「────」
「えっ」
すずかの瞼が、ピクリと動いた気がした。
涙で霞んだ目を擦り、再びすずかの白い顔を見つめる。
胸はいつも通り、規則正しく上下している。
頬は、わずかに紅色(べにいろ)に染まって来ている気がした。
「すずか?」
声が、震えてしまった。
ピクリ。
握っていた、彼女の手が、わずかに痙攣する。
その握っている手に、力が入らなくなる。
彼女は、ゆっくりとその瞼を動かし、茶色の瞳をあらわにした。
信じられない気持ちの俺は、身動きが取れない。
「──せ、ん」
確かに彼女は、俺の名前を呼んだ。
これは、現実か・・・・・・?
夢じゃ、ないのか?