鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
部屋をそのまま、出ようとしたとき。
「まって」
「どうした?」
すずかが、小さな声で、止めた。
俺はベッドから数歩のところで立ち止まる。
すずかは、俺の首に腕を回して、落ちないようにしている。
そのため、声が耳もとで聞こえてくすぐったい。
「ねぇ千、やっぱり────」
彼女は、消え入りそうな声で、耳もとでささやいた。
「──わかった」
俺は微笑むと、ベッドに再び腰掛けた。
すずか、俺はお前が運命の人だって思っている。
何度も何度遠回りをした。
想いがすれ違ったこともあった。
でも、今、君はこうして俺の隣にいる。
もうきっと、離れることはできない。
ずっと、最後まで。
俺は再び、愛しい妻の唇に口づけを落とした。
『ねぇ千、やっぱり─────
今は、二人でいたい・・・・・・』
──END