鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





 部屋をそのまま、出ようとしたとき。



「まって」



「どうした?」



 すずかが、小さな声で、止めた。

 
 俺はベッドから数歩のところで立ち止まる。


 すずかは、俺の首に腕を回して、落ちないようにしている。


 そのため、声が耳もとで聞こえてくすぐったい。



「ねぇ千、やっぱり────」



 彼女は、消え入りそうな声で、耳もとでささやいた。



「──わかった」



 俺は微笑むと、ベッドに再び腰掛けた。



 すずか、俺はお前が運命の人だって思っている。


 何度も何度遠回りをした。


 想いがすれ違ったこともあった。


 でも、今、君はこうして俺の隣にいる。


 もうきっと、離れることはできない。


 ずっと、最後まで。


 俺は再び、愛しい妻の唇に口づけを落とした。 















『ねぇ千、やっぱり─────




 今は、二人でいたい・・・・・・』










──END








< 435 / 445 >

この作品をシェア

pagetop