鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
何も出来ないことがもどかしくて、あたしはお気に入りのクッションに顔を埋めた。
──ガチャリ。
そのとき、音もなくドアが開いて、あたしはぼんやりとそちらを向いた。
誰・・・・・・?
お父さん?
・・・・・・違うか。
お母さんにつきっきりだったもの。
「よう、りん。
生きてるか?」
軽い口調。
人影はあっという間にあたしの寝ているベッドまで来ると、あたしの真横に座り込んだ。
この人の重みで、ベッドのスプリングがギシリと軋む。
この感じ・・・・・・。
もしかして・・・・・・。
「絖覇・・・・・・?」
なんでここに?
身体を動かすことすらダルくて、絖覇の方を見ずに彼の名前を呼ぶ。
「大丈夫かよ」
・・・・・・大丈夫じゃないわよ。
けれど、そんなことも言えない。
弱音は絖覇の前では吐きたくない。
そのとき、ふんわりと頭になにかの重みを感じた。
それは、絖覇の大きくて温かい手の平だった。