鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「ウソだって、ウソウソ!」
なわけあるか━━っ!
バカ!
「もう、絖覇なんて知らない!」
同情なんてしたあたしがバカだった!
プイと顔を逸らすと、あたしは絖覇の家に向かって早歩きで歩きだした。
「まてよ」
「ひゃっ!?」
グイッと腕を、引っ張られ身体が傾いたと思ったら、目の前に黒縁眼鏡をした絖覇の顔があった。
「・・・・・・っ!
なによ」
声が震えて、ドクン、ドクンと鼓動が大きく高鳴る。
「お前、学校で魔物と戦ったあと、ほかに魔物と戦っただろ」
え・・・・・・っ!
なんで、それを知って・・・・・・。
すると、絖覇はニヤッと笑った。
あ、ヤバイ笑顔だ。
なにか、変なこと考えてる・・・・・・!
「実は俺、りんに結界を張らせてもらってたんだ。
りんを守るための」
「えっ、なにそれ。
いつ張ったのそんなの!」
慌てて身体を見回すけど、分からない。
え、どういうこと?
「あー、結界張ったのはこの前りんの部屋に行ったときだ。
首にキスしただろ。
あのとき、結界張ったんだ」
えっ!
ボボボッと身体中の熱が顔に集中した気がした。
無意識のうちに、絖覇にキスされた首もとを手で押さえていた。
けれど、それは絖覇によって外されて・・・・・・。
「なにか強い衝撃があったんだな。
壊れてなくなってる」
首もとをまじまじと見つめられた。
恥ずかしくて、顔を背けてしまう。
強い衝撃って・・・・・・、あ!あのときだ!
ナトと魔物を倒したとき!
魔物の手が、あたしに向かってきたけど、なぜか跳ね返されたんだよね。
そういうことだったんだ。
一人で納得。
──チュッ。
「っっ!?」
首筋に、熱くて柔らかな感触がして、下を見ると、ニヤリと笑った絖覇の顔があった。
「また、結界張っといたから」
なっ・・・・・・!
勝手になにしてるのよ!