鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
第二章 過去を知るとき
希望
それから一日経った午後、あたしたちは居間へと集合した。
外は、蝉が大合唱し、さらに熱く燃えるような太陽がジリジリと地面を焦がすように照り付けていた。
お父さんによって居間に運ばれたお母さんはソファに寝かされていた。
薄ピンクのワンピースを着て、腰まである髪を下ろしたままのお母さんはまるで眠り姫のよう。
ずらりと並んだ長い睫毛が、白い頬に影を落とし、ピンク色に染まった頬がさらに彼女の美しさを引き立てている。
そして、朱色のプルプルの唇。
それはゆっくりと、規則正しい呼吸を繰り返していた。
お母さん・・・・・・。
今、助けるからね・・・・・・。
「・・・・・・準備はいいか?」
「うん」
「おう」
あたしたちが頷くと、お父さんは呪文を唱えた。
「この世の希望を司る神聖なる力よ、我は伝説の鈴を守るもの。
今、この場に現れよ、偉大なる伝説の鈴よ!」
──ブワリ!
呪文が、終わるやいなや、凄まじい光の渦が巻き起こる。
差し出した手の平から、その光の渦に霊力が吸い取られていく。
気を張っていないと身体ごと、持っていかれる!
「・・・・・・・・・・・・!」
全てが、飽和状態になったとき、光の渦の中に人影が現れた。
彼女が手をひとふりすると、光と風は止んだ。
豊かに実った、太陽の光を浴びて風に揺られる小麦を思わせる金色のフワフワの髪。
その小麦色と同じ色の瞳が、フワリと細められた。
「私を呼びましたか?千よ」
キレイな澄んだ声が、心の奥まで響き渡った。
「ああ、勝手に呼んですまないな」
この人が・・・・・・。