鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 
「ここは、すずかたちが住んでた村だけど、それよりちょっと前の時代よ。


 つまりまだ、すずかはここには生まれてきてない」



 伝説の鈴の案内で、あたしたちはだんだん村へと近づいていく。



 ──っん?


 あれ?


 もしかして、これ。



 絖覇、あたしをお姫様抱っこしてない?


 なんでぇ!?



 絖覇の顔を見つめると、ボボボッと顔に熱が集まってしまい、慌てて顔を背けた。



「ん?なんだよ」



 き、気付かれた。


 見てたこと・・・・・・。


 というか、



「お、降ろして!


 あたし、もう大丈夫だから!


 歩けるし!」




「え~、珍しく大人しかったから、このままでいるかなぁとか思ってたのに~」



 バタバタと暴れるけど、顔をしかめた絖覇はなかなか離してくれない。


 諦めるかっての!


 恥ずかしいし、お姫様抱っこって以外と怖いんだから!


 それでもなお、暴れると絖覇は渋々というように離してくれた。


 はぁ、よかった。


 まったく、変態なんだから、この弟は!



 変態弟とか呼んでやろうかしら。


 それにしても・・・・・・絖覇、あたしより小さくていっつもヘラヘラしてるのに、軽々とあたしを抱っこしてた。


 いつも昔は、あたしの後ろに隠れて、転んじゃったときなんか、あたしがおんぶしてあげてたのに・・・・・・。



 いつの間に、あんなに大きくなったの?


──ドクン。



 また、聞いたことのない音が、脳の奥で響いた。



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