鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~





 それから、しばらく森の中を歩き続けた。


 もう、かれこれ1時間くらい歩いてるから、あの村からだいぶ離れてしまったと思う。


 そして、森を抜けると現れたのは・・・・・・。



「わ、あ・・・・・・キレイ・・・・・・!」




 洞窟のような祠(ほこら)だった。


 その横では、水がサラサラと滝のように流れ落ち、太陽の光を受けて反射している。


 時々、パシャリと水が跳ねて、空中に小さな虹を作った。


 洞窟の入口のようなところには、大きなしめ縄が垂れ下がっている。


 そして、入口の左右に木を燃やして明かりをつけていた。




 キレイなとこ・・・・・・。


 こんなキレイな祠、初めて見た。


 もともと祠を見るのも初めてなんだけど、ここはどんな祠よりも神聖な場所のような気がした。






「あの、ここは?」


 洞窟の中を覗いたり、滝に向かって手を叩いたりしていた伝説の鈴に、話しかけると、彼女は「おかしいわねー」といいながら、こちらを向いた。



「どうしたの?」



「・・・・・・あ、いえ、あの・・・・・・ここはどこですか?


 何か、ここに力の使えない理由があるんですか?」




 すると、彼女はさも当然のように、さらりと言い放った。




「ああ、ここは私が奉られている祠よ。



 力の使えない理由とは、ちょっと違うんだけど・・・・・・」




 ええええええ!!


 びっくりしすぎて、声が出なかった。


 そんな簡単に「ここは私が奉られている祠」とか言う?


 まあ、それくらい力が強いんだけど。



 お母さんたちの村に、奉られてたんだ。


 こんな、遠く離れた山奥に。




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