鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「それじゃ、何してるんですか。
さっきから、手を叩いたり誰かを呼んでるみたいですけど」
さっき、あたしが暴れてから、一言も喋らなかった絖覇が、伝説の鈴を見てズバリ!と言う。
それ!
あえて聞かないようにしてたのに、なんで聞いちゃうのよ!
パクパクと、口を金魚みたいに動かすけど、彼女しか見ていない絖覇には伝わらなかった。
「確かにその通り。
人を呼んでるのよ。
けど全然来ないのよね、おかしいわ。
いつもなら、ここにいるはずなんだけど」
彼女は相変わらず、辺りを見渡す。
いつもなら、ここにいる?
ってことは、ここに住んでるの?
「えっと、伝説の鈴さん」
絖覇が、質問を続ける。
すると、彼女は他の場所を見ながらツッコんだ。
「“ムギ”でいいわよ。
いちいち伝説の鈴って、言いづらいじゃない?」
「わかりました」
絖覇は少し、ポカンと立ち尽くしていた。