鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
「もー、なんでこういうときに限っていないんだろ、あの双子!」
どうやら、ムギが探しているのは双子らしい。
「曾爾(そに)━━━!曾於(そお)━━━!
出てきて━━!」
そに、そお。
凄い名前。
でも、昔なら、普通なのか?
そして、しばらくすると。
「ゴメ━━ン! ムギ!
ちょっと、村に用があって!」
「遅くなっちゃった!
って、そこの二人誰?」
さっき、あたしたちが通ってきた道を書き分けて美しい双子が現れた。
一人は、女の子で腰まである青色の髪をそのまま降ろして、上の方の髪だけを少しすくって小さな鈴のついた簪(かんざし)を差している。
そして、漫画とかで出てくるような朱い袴と、白い着物を着ている。
もう一人は、男の子で女の子と同じ色の髪を、後ろで束ねて紙で出来た飾りで縛っている。
こちらも、剣道とかで着ている袴を着ていた。
二人とも、黄緑色の大きな瞳をキラキラと輝かせていた。
あたしたちより、5歳くらい下みたいだ。
あのナトのいつもの格好くらい。
ムギは、その双子と目線を合わせるためにしゃがんだ。
「この二人は、私の友達よ。
このお姉ちゃんがりん。
お兄ちゃんが、絖覇よ」
すると、二人はあたしたちを嬉しそうに見上げた。
「お兄ちゃんとお姉ちゃん、ムギの友達なんだ!」
「ボクたちもなんだ!
よろしくね!」
「「りん姉ちゃん、こう兄ちゃん!」」
双子は声を揃えて言うと、ニカリと笑顔を浮かべた。
か、可愛い!
一人っ子のあたしは、妹とかがいないから、“お姉ちゃん”と言われるのは新鮮だ。
この二人、すっごい可愛いし!
「自己紹介しなさい、曾爾、曾於」
「うん!
わたしは、曾爾!
曾於と双子で、わたしの方がお姉ちゃんなんだよ」
「ボクは曾於。
弟だけど、曾爾より強いよ」
「なによ!
武術なら、わたしの方が強いもん!」
「それでもボクは霊力が強いよ。
お父様とお母様しか使えない陰陽師の術、ボクにはできる」
「そんなの、たまたまでしょっ!」
「なんだと!」
なんと、兄弟喧嘩が始まってしまった。
まだまだ小さい双子の喧嘩は、言い合いだけで済んでるから幸いだけど。