鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~
うそーん。
思わず絖覇の背中にしがみついてたけど、コイツの背、あたしより低いし、本当に怖がったワケじゃないし。
コイツ、ダメだ・・・・・・。
何者かわからない生物は、徐々に校庭から校舎のほうへと近づいていく。
まだほかの人は気づいていない。
あたしは絖覇の後ろから生物のほうへと歩み寄った。
「りん?」
「大丈夫よ」
あたしは不安そうな絖覇に笑いかけた。
誰にも言ったことのない秘密。
絖覇に見せるのは、ちょっとあれだけど・・・・・・。
幼なじみだから、黙っててくれるよね。
あたしはそのまま、生物を睨んだ。
「グルルルルルゥッ!!!」
こちらに気づいた生物は、雄叫びを上げて突進して来る。
うまくいくかな・・・・・・。
それでも、怯えてちゃダメだ。
あたしはゆっくりと右手を前に突き出した。
──ポゥッ。
右手に金色の光が灯る。
「りん、それは!?」
「黙ってて、絖覇!
逃げて!」
──ドカン!
「ギイエエエエッッ!!!」
あたしの右手から、溢れた光は生物に当たると・・・・・・炸裂した。
──ドサリ。
生物は遥かに10メートル吹き飛んで、校舎の横にある木にぶつかって気絶した。
ああ、よかった。
ちゃんと効いた!
そう、あたしの使った力とは、霊力のこと。