鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~




 遠くで、誰かがキレイな夕焼けをバックに立っている。


 あれは・・・・・・お母さんだ。


 お母さんはこちらに気づくと、あの優しい笑顔を向けてくれた。



『りん、おいで』



 そう言って、あたしに手をさしのべる。


 あたしは無我夢中でお母さんのその胸に飛び込んだ。


 この優しい温もり。


 花束を広げたような柔らかい香り。


 これはお母さんだ。


 間違いない。


 だって、こんなにも温かい。


 それでも、夢のようでこのまま離してしまったら、儚く消えてしまいそう。


 お母さんに強く抱き着いた。


 お母さんはあたしの頭を優しく撫でてくれる。



『どうしたの?


 珍しく甘えん坊ね』



 お母さんの言葉を聞けたことで、胸がいっぱいになってしまって何も言えなくなってしまう。



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