切片詩集 限界セグメント
訃報






君の守りたかったものを置いて
なぜか君はドアを出て行った
理由はない
原因は不明
でも君はもうこの世にはいない
遠くで起きたその事実が
承服しがたい雑音のように響く
いや、雑音じゃない
雑音だと思いたいくらいクリアな音
中空のように

笑ってる顔しか覚えてないよ
背が高くなったね
声変わりしたね
大学はどこに行くんだい?
医者にはならないのか…

すべての期待と意味をねじ伏せて
君は唐突に向こうへ行く
どんな悲しみも
その意味をつなぐことは出来ない
将来や希望や夢や実現や
そういうものがなぎ倒されて
嵐の後に君を愛するものが立つ
そこに何を見出すんだろう
たったひとつ喪失というものが
この世のベールを剥ぐのだとしたら
君はそのためにひとつの空虚を
この世に残す
その空虚のために
この世がすべて反転して虚ろになったなら
それを見せたかったのは
誰なんだろうか

それもまた解釈に過ぎない
君は消えた
それ以上でもそれ以下でもなく









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