切片詩集 限界セグメント
あの声




見つけてはいけないものを
見つけたあとで
僕はひっそり笑う
胸の痛みがね
止まらないんだ
止まらないことに僕は微笑む
そこに陶酔の余地があれば
僕は地面を舌で清めようとさえ

待ってはいけないものを
待ってるあいだ
僕は見えない場所で嘔吐する
苦しみは絶えることがない
それだけわかっていればよい
立ち上がろうとしないことを
どれだけ許せるかに僕は賭ける

苦痛に悶えているとき
僕はどこかで幸福を感じている
諦念が生まれる前の焦燥に
僕はわざと身を任せる
そんなことが許されるのだ
愛の名のもとにおいて
すると不意にあの声が聞こえてくる
そんなことが起きるのだ
愛の名のもとに、おいて。






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