この恋、永遠に。
「美緒、やっとそれ、はめてくれたんだ」

 ご飯を食べているとき、柊二さんが私の左手薬指を見て微笑んだ。

「はい。今はその、申し訳ないとは思うんですけど仕事をしていませんし、はめても問題ないと思って…」

「うん、よく似合うよ。可愛い」

 私の指で煌くピンクダイヤモンドのエンゲージリングを見ながら、彼が褒めてくれた。柊二さんはいつも私の事を可愛いと言ってくれる。ストレートに言われると気恥ずかしいけれど、やっぱり嬉しい。私も柊二さんに素直に伝えられるようになれたらいいのに。
 私は照れながらも、ありがとう、とお礼を言った。

 食事が終わると柊二さんは書斎に篭る。私のために早く帰宅するから仕事が残っているのだろう。私はその間に食事の片づけをして、彼のためにコーヒーを淹れる。ついでに私のミルクティーも。

 最初はこの家にはコーヒーしかなかった。けれどいつの間にか、いろんな茶葉が置いてあった。お砂糖も、ミルクも。彼が私のために用意してくれたということがすぐに分かった。
 私はこんなにも愛されている。私は彼のために何が出来るのだろう。

「美緒、ちょっとおいで」

 食事の片づけを終えて柊二さんのコーヒーと、私のミルクティーを用意していると、書斎から戻った柊二さんがリビングのソファに座って私を呼んだ。何だか嬉しそうだ。
 いったん手を止めて私がソファまで行くと、彼は私を隣に座らせ、大きな薄い、四角い箱を私の前に出す。

「開けてごらん?」

 優しく促された私はそっと箱を開け、息を呑んだ。
 箱の中に入っていたのは明るい紫色のパーティードレスだった。

「これ……」

「美緒に似合うと思ったんだ。明日はそれを着てデートをしよう」

 箱から取り出して体に当ててみると、見ているよりもずっと素敵だった。光沢のあるサテン生地のドレスは膝丈で、大小様々な花の精緻な刺繍が施されており、裾には同系色のオーガンジーがあしらわれている。ウエストよりも高い位置にあるリボンは背中とサイドに二つ。よく見ると花の中心には転々と光る石が埋め込まれていた。これは、ダイヤモンドだ。

「うわぁ……可愛い!」

 私は思わず歓喜の声を上げた。

「気に入ってくれた?」

「はい!とっても!」

「よかった」

 満足そうに微笑む柊二さんは、立ち上がってドレスを体に当て、はしゃぐ私の腕を掴むと軽く引き寄せ頬にキスをした。
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