この恋、永遠に。

目覚め

 目覚めて最初に目に入ったのは見慣れない白い天井だった。すぐに痛みに顔をしかめる。違和感を感じて視線を彷徨わせると、どうやら足を固定されているようだ。左腕からは点滴の管が伸びている。病院だ、ということは間もなく分かった。そして右手に感じた温もりに私は微笑む。

 彼だ。
 私の右手を両手で握り締めた彼は、椅子に座ったまま、頭をベッドにつけて眠っている。眠る彼も素敵だけれど、その目にはひどいクマがあった。
 何が、あったのだろう。
 ぼんやりと覚醒しきらない頭の中で、私は記憶を手繰り寄せる。僅かに身じろぎすると、彼を起こしてしまったようだ。

「ん………」

 長い睫が震えたかと思うと私がよく知る、漆黒の瞳が覗いた。何だか久しぶりに見たような気がする。そしてすぐにその瞳は見開かれ、彼の唇から震えてかすれた声が漏れた。

「……美………緒………」

 私は微笑んだ。ズキンとどこかが痛んだ。

「柊二さん」

 そっとその名を呼ぶと、彼は笑ったような、泣いたような顔をして微笑み、私の右手を強く握った。柊二さんの温もりだ。そのまま私の胸に顔を埋めるようにして、彼はもう一度私の名前を呼んだ。
 彼の肩は震えていて、もしかして泣いているのかもしれないと私は思った。

「柊二さん」

 もう一度彼の名前を呼ぶと、彼は私の胸に顔をうずめたまま、ただ私の名前を繰り返し呼んで、私の手を握った両手に力を込めた。



 目を覚ました私に、柊二さんがナースコールを押すと、すぐに医師と看護師がやって来た。医師がてきぱきと私を診察しながら、優しい顔で「もう大丈夫ですよ」と微笑んだ。

 私は交通事故に遭い手術をしたそうだ。
 ここは病院で、事故で運ばれた私は手術を受け、その後ICUに一週間入ったらしい。私の記憶は事故前後で途切れているからクリスマスはとっくに終わり、年も明けてしまったことに驚いた。柊二さんと過ごす初めてのクリスマスをとても楽しみにしていたから、残念だ。

 事故前後の記憶は混沌としていて分からないけれど、交差点のカフェで柊二さんを待とうと思っていたことは覚えている。その後、事故にあったのだろうか。

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