この恋、永遠に。
「美緒、友達が来てくれたよ」

 やっとベッドの上で起き上がることができるようになった頃、柊二さんが誰かを連れて病室に入ってきた。

 私が入院しているこの病棟は特別病棟で、一般者は許可なく入ることができないらしい。ロック式の自動ドアで管理されていて、お見舞いに来てもらうときは許可を得る必要があるそうだ。

 柊二さんが手配してくれたこの病室は、恐らくこの病院で一番豪華な病室ではないかと思う。はっきり彼に聞いたわけではないけれど、圧倒されてしまうほど豪華な設備なのだ。ここが病院であることを忘れてしまいそうになる。
 私のベッドがある部屋はまるで一般家庭のリビングのようで、リビングテーブルもソファも、ライティングデスクもあり、設置されている大型テレビはベッドから見やすい位置に置かれている。すぐ隣には和室と洋室があり、どちらも付添い者が寝泊りできるようになっていた。柊二さんは洋室を使っている。バス・トイレ・洗面台はもちろん、ミニキッチンまで付いているという贅沢ぶりだ。

 私にはこんな贅沢な病室は必要ないと思うのだけれど、柊二さんがずっと私に付き添ってここで寝泊りをしてくれるから、彼のためには必要かもしれないと思い彼の好意に甘えてしまっている。彼は相変わらず優しい。

「美緒先輩!」

 柊二さんに連れられて入ってきたのは萌ちゃんと晃くんだった。萌ちゃんはベッドの上で上半身を起こしている私に駆け寄ってくると、抱きついて泣きじゃくった。晃くんも悲痛な面持ちをしていたけれど、私と目が合うとふっと微笑んでくれた。

「美緒先輩が事故に遭ったって聞いて……私、私……」

 萌ちゃんは嗚咽が止まらなくて言葉にならない。代わりに隣に立っていた晃くんが説明してくれた。

「美緒先輩が事故にあった翌日、本宮さんから連絡が来たんです」

 晃くんがちらりと後ろを振り返った。
 柊二さんはソファに座って私たちの様子を見ていたが、晃くんが振り返ると私を見て微笑み、そのままノートパソコンに向かい始めた。テーブルとソファの上には紙が散乱している。きっと私の傍についている所為で仕事が溜まっているのだ。相変わらず私は彼に迷惑をかけてばかりだ。

「俺たちが病院に来たときは美緒先輩はまだICUにいて、家族以外は入れないと言われて…。容態が落ち着いて一般病棟に移ったら連絡する、って本宮さんに言われたんです」

 萌ちゃんの嗚咽が落ち着いたので、私は二人に椅子を勧めた。キャスターの付いた一般的な椅子だ。萌ちゃんは腰を下ろすと、泣いて赤くなった瞳で照れくさそうに笑った。

「一般病棟に移って本宮さんは連絡をくれたけど、美緒先輩の意識が戻らないって聞いて…。意識が戻らないのにお見舞いに押しかけても却って迷惑だと思って、意識が戻ったら連絡してくれるようお願いしたんですよ。……それにしてもここは、すごいところですね」

 晃くんが話しながら病室を見回し、おどけたように肩を竦めてみせた。萌ちゃんもうんうん、と頷いている。私も同じことを思っていたから、「ね?」と同意して軽く笑ってみせた。

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