この恋、永遠に。
 以前のように二人と気軽に話せるのが嬉しい。柊二さんと晃くんは少し気が合わないようだったけれど、私の事故のことを彼らに知らせてくれたのは柊二さんだし、こうして見ていると二人の間に険悪な空気は見られない。
 私が笑うのを見て安心したのか、萌ちゃんと晃くんはやっといつもの笑顔を見せてくれた。
 私が二人の誕生日パーティーに出席できなかったことを謝ると「結婚式に呼んでくれればいいですよ」と私の左手薬指にはまったエンゲージリングを見ながらからかわれた。
 みんなを心配させてしまったことは申し訳ないけれど、こうして心配してくれる友人がいるのは幸せだ。

 本当はもっと二人と話していたかったけれど、柊二さんが私の体を気遣ってそろそろ眠るように言った。まだ十分くらいしか時間が経っていなかったのに、私の体は元のようにはいかない。少し起きているだけで疲れてしまう。少し過保護な柊二さんだけれど、私は素直に甘えることにした。

 二人を送って行って戻ってきた柊二さんが、ベッドを操作して私を寝かせてくれた。そっと微笑んで私の前髪を掻き分けると額にキスをくれる。「少し眠って」と言い、ゆっくり私の髪を梳いてくれた。
 柊二さんの大きな手が私の頭を撫でてくれるととても安心する。そのきれいな長い指で髪を梳かれると、ドキドキする。
 こんなに私を大切にしてくれる彼を、私も幸せにしたいのだけれど。



 萌ちゃんと晃くんがお見舞いに来てくれた翌日、駆けつけてくれていた私の両親が一度帰ることになった。
 事故当日、孝くんが両親に連絡を入れてくれたらしい。あの日は全国的に雪が降ったため飛行機が飛ばず、両親がこの病院に着いたのは連絡を受けた翌日遅くだったと聞いた。もっとも、私はその頃ICUにいて、話は後から柊二さんに聞いたのだ。

「じゃあ美緒、私たちはいったん帰るけど、すぐにまた来るから」

 ベッドの上で半身を起こした私の頭を撫でながら、母が心配そうな顔をした。こんなにも両親に心配させてしまったことに心が痛む。私はこれ以上心配をかけたくなくて、精一杯微笑んだ。

「うん。心配かけてごめんなさい。でももう大丈夫だから」

「そうね……」

 母が目を細める。

「柊二さんがついててくれるものね……。美緒、あなたは幸せだわ。あんなに素敵な人が、あなたをこんなに想ってくれてるんですもの」

「……うん」

 両親には彼にプロポーズされた後で、一度挨拶に行っていた。会って欲しい人がいると話した時点で薄々感づいていたようで、柊二さんと二人で実家に帰省したときは家中がピカピカに磨かれていて、沢山のごちそうが用意されていたことに驚いた。
 でも、もっと驚いたのは両親だったようだ。私が婚約した相手が、本宮商事の後継者、本宮柊二さんだと知って。あの時の両親の慌てふためきようを思い出し、私はくすりと笑った。

 そんな私を見て、母も安心したようだ。じゃあまたね、と言って隣に黙って立っていた父を促す。父は無口で多くを語らない人だけれど、その瞳から私への愛情が溢れていた。

「お父さんもあまり無理しないで。体を壊さないでね」

 そう声を掛けると「まだそんな歳じゃないぞ」と父はふんぞり返った。そんな父を見て、母と私が笑う。
 父や母とこうして会って話せることに感謝する。生きていて良かった。
 これからもこうして両親とたまに会って話して、柊二さんと一緒に、生きていける。
 私と一時の別れの挨拶を済ませた両親は、廊下で待つ柊二さんのもとへ向かった。柊二さんが両親を空港まで送ってくれるのだ。

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