この恋、永遠に。
斉藤圭子は逮捕され身柄を拘束された。
俺は美緒をなるべく動揺させないように話をしたつもりだ。だが、彼女も寝耳に水といった感じで、全く身に覚えがないと言っていた。接点もなく、唯一知っていることと言えば、斉藤は高科のことが好きかもしれない、ということだけだった。彼女の様子からして、嘘をついているようにはとても思えない。ただその時彼女が、荒らされたアパートに、一枚のメモが残っていたことを話してくれた。初めて聞くその話に俺は憤りを感じた。何故もっと早く言わなかったんだ!
彼女は瞳に涙をいっぱい溜めて謝った。彼女を泣かせたいわけじゃないんだ。ただ、守りたいだけなんだ。
俺は美緒が話してくれたメモを取りにマンションへ戻った。彼女用に新しく用意させたドレッサーの引き出しに、そのメモはあった。『彼を取らないで』とだけ書かれたメモだ。これがあればもっと早く犯人を捕まえ、彼女も事故に遭うことはなかったのに、と思うとやりきれない。
彼女の同意を得て、先日の刑事二人に病室まで来てもらい、刑事からも話を聞いた。美緒が言っていたメモを渡すと、これで事件が進展すると、刑事はいったん戻っていった。
美緒が入院して一ヶ月が経過した。相変わらず彼女はベッドから出ることが出来ない。俺がマンションに帰らず、ずっとここで寝泊りしているのを彼女は気に病んでいるが、そんな心配は無用だと何度言っても伝わらない。
美緒がこの病院で一人で寝るのが平気でも、俺が、駄目なのだ。美緒のいないマンションで一人で朝を迎える気にはなれない。いつの間にか彼女は俺の生活の一部になっているのだ。俺が、ここにいたいのだ、ということをどういう言葉で説明したら、彼女は納得してくれるのだろう。
その日、やっと美緒に車椅子で移動する許可が出た。彼女の足はまだ全く動かせないので、俺が美緒を抱き上げて車椅子に乗せる。外はまだ厳しい寒さで散歩をするには向いていないため、俺は彼女に特別病棟の中を案内することにした。
ずっとベッドの上で退屈していた彼女だったから、たったこれだけのことでも、とてもはしゃいでいる。
「うわぁ、すごく綺麗ですね」
二十階の窓から見える中庭の風景に、彼女は魅入った。今までベッドから見ていた景色と、こうして窓に張り付くようにして見える景色では全く別物なのだろう。ベッドの上からでは、きっとほとんどが空に違いない。
俺はそんな些細なことで喜ぶ彼女を可愛いと思い、同時に切なくなった。こんなことがなければ、彼女は当たり前のようにこんな景色をいつでも見られたのだから。
「一階に降りてみる?」
「いいんですか?」
彼女があまりに喜ぶので、俺は一階のロビーから中庭を見ようと提案した。瞳をキラキラさせて俺を見つめる彼女に、俺は屈むとその唇をそっと奪う。
「いいよ、もちろん」
微笑んで頷くと、彼女は昔のように顔を真っ赤にして両手を頬に当てている。顔を隠しても長い髪から覗く耳が赤いことを彼女は知らない。いつまで経っても初々しいところが愛しくて仕方がなかった。
一階に下りて二人で中庭を眺めていると、沢口から電話が入った。
俺は美緒をその場に残し、彼女の姿が見えるギリギリの位置まで離れると、電話に出た。
「どうした?」
『斉藤圭子の動機が分かりました』
俺は美緒をなるべく動揺させないように話をしたつもりだ。だが、彼女も寝耳に水といった感じで、全く身に覚えがないと言っていた。接点もなく、唯一知っていることと言えば、斉藤は高科のことが好きかもしれない、ということだけだった。彼女の様子からして、嘘をついているようにはとても思えない。ただその時彼女が、荒らされたアパートに、一枚のメモが残っていたことを話してくれた。初めて聞くその話に俺は憤りを感じた。何故もっと早く言わなかったんだ!
彼女は瞳に涙をいっぱい溜めて謝った。彼女を泣かせたいわけじゃないんだ。ただ、守りたいだけなんだ。
俺は美緒が話してくれたメモを取りにマンションへ戻った。彼女用に新しく用意させたドレッサーの引き出しに、そのメモはあった。『彼を取らないで』とだけ書かれたメモだ。これがあればもっと早く犯人を捕まえ、彼女も事故に遭うことはなかったのに、と思うとやりきれない。
彼女の同意を得て、先日の刑事二人に病室まで来てもらい、刑事からも話を聞いた。美緒が言っていたメモを渡すと、これで事件が進展すると、刑事はいったん戻っていった。
美緒が入院して一ヶ月が経過した。相変わらず彼女はベッドから出ることが出来ない。俺がマンションに帰らず、ずっとここで寝泊りしているのを彼女は気に病んでいるが、そんな心配は無用だと何度言っても伝わらない。
美緒がこの病院で一人で寝るのが平気でも、俺が、駄目なのだ。美緒のいないマンションで一人で朝を迎える気にはなれない。いつの間にか彼女は俺の生活の一部になっているのだ。俺が、ここにいたいのだ、ということをどういう言葉で説明したら、彼女は納得してくれるのだろう。
その日、やっと美緒に車椅子で移動する許可が出た。彼女の足はまだ全く動かせないので、俺が美緒を抱き上げて車椅子に乗せる。外はまだ厳しい寒さで散歩をするには向いていないため、俺は彼女に特別病棟の中を案内することにした。
ずっとベッドの上で退屈していた彼女だったから、たったこれだけのことでも、とてもはしゃいでいる。
「うわぁ、すごく綺麗ですね」
二十階の窓から見える中庭の風景に、彼女は魅入った。今までベッドから見ていた景色と、こうして窓に張り付くようにして見える景色では全く別物なのだろう。ベッドの上からでは、きっとほとんどが空に違いない。
俺はそんな些細なことで喜ぶ彼女を可愛いと思い、同時に切なくなった。こんなことがなければ、彼女は当たり前のようにこんな景色をいつでも見られたのだから。
「一階に降りてみる?」
「いいんですか?」
彼女があまりに喜ぶので、俺は一階のロビーから中庭を見ようと提案した。瞳をキラキラさせて俺を見つめる彼女に、俺は屈むとその唇をそっと奪う。
「いいよ、もちろん」
微笑んで頷くと、彼女は昔のように顔を真っ赤にして両手を頬に当てている。顔を隠しても長い髪から覗く耳が赤いことを彼女は知らない。いつまで経っても初々しいところが愛しくて仕方がなかった。
一階に下りて二人で中庭を眺めていると、沢口から電話が入った。
俺は美緒をその場に残し、彼女の姿が見えるギリギリの位置まで離れると、電話に出た。
「どうした?」
『斉藤圭子の動機が分かりました』