この恋、永遠に。
最終章

残酷な告知

 美緒が入院して三ヶ月が過ぎた。事故にあった日は雪が降っていたのに、今はもう桜が満開だ。
 中々回復しない自分に焦りを感じている彼女の様子が伝わってくる。焦らなくていいんだ、と彼女に言い聞かせてはいるが、俺も実際はもどかしくて仕方がない。何より、苦しいリハビリを彼女に強いなければならないことがつらいのだ。

 最近は俺も会社に出社するようにしている。昼間、美緒を一人病院に残すのは心許ないが、いつまでもオフィスを不在にする訳にもいかない。
 俺が美緒の傍を離れるのを躊躇っていると、美緒の担当の看護師に笑われた。「そんなに心配しなくても、誰もあなたから美緒ちゃんのことを取ったりしませんよ」と。あの看護師は俺が美緒を溺愛しすぎているといちいち指摘してからかってくるから苦手だ。美緒も何で彼女にあんなに懐いているんだか。



 その日、仕事を終えた俺が早めに病院に戻ってくると、俺の姿を見つけた看護師から美緒の担当医から話があるので来てほしいと言われた。長引く入院生活のことだろうか?俺は美緒の病室に顔を出す前にその医師の元へ向かった。

 一般病棟へ行くとすぐに診察室に呼ばれた。中に入ると美緒の担当医がレントゲンを見ながら眉間に皺を寄せている。その表情を見た俺は、背中に嫌な汗をかいた。心臓がドクドクと不快な音を立てる。

「失礼します」

 一声かけて用意されたスツールに腰を下ろす。
 医師はちらりと俺を見ると、小さく息を吐いた。

「本宮さん、早速本題に入りますが……」

 彼は椅子をクルリと回し、俺の正面を向いた。

「非常に申し上げにくいのですが、渡辺美緒さんの足は………回復の見込みがありません」

「………え?」

 眉尻を下げた医師は言いにくそうにしながらも、もう一度はっきりと言った。

「彼女は、恐らくもう歩くことはできません」

 俺は聞き間違えただろうか?彼は今、何と言った?

「すみません、今、何と………?」

 震える声で確認する。けれど医師は首を振るだけで、それ以上それに答えることはなかった。
 彼は今、美緒がもう二度と歩けないと、そう言ったのか?確かに?
 言葉が出ない。全身の血の気が失せて凍り付いてしまったようだ。

「………それは……確か、なのですか?」

「………ええ、残念ですが」

< 116 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop