この恋、永遠に。
「本当に、いいの?」

 孝くんが私のスーツケースを運びながら心配そうに眉根を寄せた。

「…はい。もうずっと、考えていたんです………」

 今日は土曜日。柊二さんは、外せない会議があると言って朝早くから会社に出社した。お昼過ぎには戻ってくると言っていたから、急がなければならない。

 私は今日、この家を出る。

 柊二さんからもらったたくさんの愛と、彼が私にしてくれたことを思うととても去り難く、やっぱりこのまま柊二さんの傍にいた方がいいのではないか、と考えたりもするが、この先の長い人生を思うととてもそうは出来ない自分がいる。

 私が柊二さんの前から姿を消せば、最初はつらくても、いずれ時間が彼の傷を癒してくれる。彼はこの先、誰かと出会い、恋をして、幸せな家庭を築くことが出来るのだ。今の私には、彼を幸せにすることが出来ない。
 指輪はリビングのテーブルの上に。彼への感謝を込めた手紙とともに置いておいた。
 彼が戻ったとき、それを見つけ、彼は悲観するかもしれない。でも今だけ。今を乗り越えれば、彼には別の幸せが待っている。

「孝くん、お願いします」

 私は孝くんにペコリと頭を下げる。彼は黙って私の車椅子を押しエレベーターに乗り込んだ。
 私が実家へ帰る飛行機に乗るために。




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