この恋、永遠に。
 本宮さんと晃くんがそんな私に怪訝な眼差しを向ける。
 私は二人に向かって堅い笑顔で誤魔化した。どうしよう。頬の筋肉が強張っている気がする。

「本宮さん、ごめんなさい。えっと、こちら、私の大学の後輩で神田萌さんと…」

「神田晃です」

 不機嫌な表情のまま、それでも礼儀正しく晃くんは軽くお辞儀をしてみせた。

「よろしく。二人は兄妹?」

「ええ。俺たちは双子なので。一応、萌が姉で、俺は弟です」

「ほう…双子」

「二人はいつも一緒なんですよ。喧嘩ばっかりしてますけど」

 私が横から口を挟むと、晃くんは照れたのか少し顔を赤くしながら萌ちゃんを軽く睨んだ。

「こうして世話ばっかりかけられてますからね」

「いいじゃない。晃だって何だかんだ言っていつもついてくるじゃない」

「それは…」

「ふふ、晃は美緒先輩目当てだもんね!」

「なっ…この酔っ払い!いい加減なこと言うな!」

 耳まで赤くした晃くんが鬼の形相で萌ちゃんを睨んだ。
 だが、萌ちゃんはどこ吹く風だ。ケラケラと可笑しそうに笑っている。酔いも手伝ってか、かなり上機嫌だ。

「もう行くぞ、萌!」

 萌ちゃんの最後の爆弾が効いたのか、晃くんは萌ちゃんの腕を強く掴むと、じゃあ、と言って到着したエレベーターに乗り込んで行った。二人の姿が消えると残った沈黙。
 エレベーターに乗り損ねてしまった。

「あ、えっと……」

 そして、萌ちゃんの爆弾は私にも落ちていた。晃くんが私目当てって、どういうこと?

「…彼は美緒のことが好きなのか」

 本宮さんが私を見下ろし、問い詰めるような視線を向ける。その強い眼差しは逃れることを許さない雰囲気があった。

「そ、そんなことないと思います。ずっと仲良くしてますけど、それはあくまで友達としてであって…」

 なぜ私はこんなに言い訳しているのだろう。
 だけど晃くんが私を好きだなんて言われても、いまいち信じられない。仲良くしてはいたけれど、ずっといい友達だった。今まで一度だってそんなことを言われたこともなければ、そんな雰囲気になったこともない。
 それに、本宮さんに誤解されたくないという思いが働いた。彼は何とも思っていないかもしれないのに。

「君は本当にそう思ってる?」

「えっ?」

「だとしたら、君はもっと……いや、何でもない」

 本宮さんは言葉を飲み込んで頭を軽く振った。何を、言おうとしたの?
 だが、彼はそれきり口を閉じてしまった。
 ついさっきまでは、あんなに和やかに話して楽しかったはずなのに。二人の間に特に何かがあったわけでもないのに。
 車に乗り込んでも彼は黙ったままで、私たちは気まずい雰囲気のまま、家路についた。

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