この恋、永遠に。
 あの気まずい別れ方をした夜からちょうど一週間が経った。本宮さんからは何も連絡がない。あの時、本宮さんは何か言おうとした。それがいいことではないことくらい、私にも分かる。彼は不機嫌そうだったし、その後口を閉ざしてしまったから。そして連絡もなく、今に至る。

 舞い上がっていたのは自分だけだったようだ。いつ来るか分からない彼からの連絡を、待つだけの女になっているなんて。
 週末の予定がないことなんていつものことだったはずなのに、今の私にはそれが何だか苦しくなっている。どうしてしまったというのだろう。

 浮かない気分のまま仕事を終え、ロッカーに向かう。制服を着替えようとポケットからスマホを取り出したところで、メールを受信していることに気づいた。
 ドクンと鳴る心臓と、高まる期待。恐る恐る確認すると、それは萌ちゃんからのメールだった。私はがっくり項垂れる。
 萌ちゃんからのメールを見てがっかりするなんて。今日も彼からの連絡はない。

「先輩!こっちこっち!」

 萌ちゃんに指定された居酒屋に行くと、彼女は既に来ていて、奥のテーブル席から手を振ってくれた。

「ごめんね、待たせちゃった?」

「ううん、全然大丈夫ですよ~」

「晃くんも、お待たせ」

 萌ちゃんの向かいに座っている晃くんにも声を掛ける。私は萌ちゃんの隣に座った。

「美緒先輩も、お疲れ様です」

 にかっと白い歯を見せて笑う晃くんは中性的な顔立ちで少し可愛い印象だ。萌ちゃんは可愛いというより美人。双子とはいえ二人は二卵性だから顔はあまり似ていない。

「じゃあまずは乾杯しよー。美緒先輩もビールでいい?」

「あ、うん」

 二人はまだオーダーしていなかったようで、萌ちゃんが「すいませ~ん」と店員を呼んで三人分のビールをオーダーしてくれた。
 この居酒屋はリーズナブルな値段でなおかつ美味しいと評判だ。大学にも近かったことから、昔はよくみんなで来ていた。
 今日は金曜日ということもあって、とくに賑わっている。萌ちゃんが席を取ってくれていなかったら、私は座れなかっただろう。

「でも、良かった~。美緒先輩がつかまって。今日は金曜だったし、もしかしたらあの人とデートかなー、とも思ったんですけど」

 三人で乾杯したあと、早速萌ちゃんが本宮さんを話題にした。

「そんな予定ないわよ」

「またまたぁ〜、すごくカッコイイ人でしたよね。大人の出来る男って感じで!本宮って言ってたけど、それって美緒先輩の会社の?」
< 22 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop