この恋、永遠に。

名前を呼んで

 柔らかなシーツがさらさらと肌に馴染む。重い瞼を持ち上げると、細い光が一筋差し込んでいた。
 朝…?
 コロリと寝返りを打つ。見上げた天井に違和感があった。
 ……私の、部屋じゃない…?
 ゆっくり辺りを見渡しながら起き上がる。

「……痛っ」

 ひどい頭痛だ。こめかみに手を当てながら部屋をぐるりと見回した。
 カーテンの隙間から漏れる光から朝だと分かる。

 薄暗い室内は広い割には物がなくどこか寂しい。部屋の真ん中に大きなベットが一つ。クィーンサイズかキングサイズだろうか。ダブルベッドよりずっと大きい。私はその上で布団に包まっていた。
 ベッド脇にはサイドテーブルが一つ。その隣にライティングデスクがある。ベッドと反対側の壁はクローゼットだろうか。カーテンが引かれた窓以外には、扉が二つ。
 全体的に生活感のない、無機質な部屋だった。

 ここは何処なんだろう。私はどうしてここへ?
 昨夜のことに思いを巡らす。
 昨夜は萌ちゃんと晃くんに誘われて、いつもの居酒屋で飲んだ。本宮さんとのことで落ち込んでいた私は、つい飲み過ぎてしまったことは覚えている。
 確か、足元が覚束ない私を、晃くんが送ると言ってくれていたはず…。
 だとしたら、ここは双子の自宅なのだろうか?何度もお邪魔したことはあったけど、こんな部屋に通されたことはなかった。

 私はゆっくりベッドを抜け出すと、壁に設置されていた姿見の前に立った。
 ひどい顔だ。髪はボサボサで、昨日の服のまま寝たらしい私のスカートは皺になっている。
 私は急いで手櫛で髪を整えると、スカートを撫で付けた。
 二日酔いで立っているのもつらい。

 背後でドアが開く音がした。晃くんか、萌ちゃんかもしれない。
 迷惑を掛けてしまったことを謝らなければ。
 気分の悪さを我慢してゆっくり振り返った私は、そこで固まった。驚いて声も出ない。
 目を見開き、口をぱくぱく動かす私は、まるで空気を求める金魚のようだったかもしれない。

「ああ、起きたのか」

 部屋に入ってきたのは本宮さんだった。

「あ、えっと……どうして……私……この部屋……」

 どうしてここに本宮さんがいるの?パニックになって何を言っているのか自分でも分からない。慌てる私には構わず、部屋に入ってきた彼は、サイドテーブルに水の入ったコップを置いた。

「覚えていない?」

「…………」

「まあ…かなり酔っていたから無理もない」

「…すみません」
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